2013年6月26日水曜日

機内映画の憂鬱

 ベルリン&プラハの旅から帰国しました!今回は旅紀行…ではなく、飛行機の機内上映の映画について。往路に2本見たのですが、両方の字幕が気になって悶々としいてたのです。(復路は爆睡して1本も見られず。)

 あえてタイトルは出しませんが、1本は最近日本で上映され、もう1本は10年前くらいにヒットした作品。両方とも機内上映用に字幕をつけ直されたようです。なぜ分かるかと言うと、字幕のつけ方が通常の劇場やテレビ用とは異なっているから。通常は横14~14.5文字ですが、今回は最高16文字(はい、数えましたよ~。職業病です)。短い掛け合いを2人分いっぺんに出す。(劇場用はどんなに短くても別々。短すぎればどちらか選び、それでも分かるように訳す。)

 このルールの違い自体は、機内で見やすくするために必要ならば、ありだろうと思います。前回、機内で見た映画は字幕がまったく気になりませんでした。今回、気になったのは翻訳の質!普通の会話部分は問題ないのだけど、ちょっと入り組んだ話になると、とたんに分かりにくくなるのです。「あれ?今のはどういうことだったの?」と考えちゃう訳が何度かありました。これって映像の字幕としては致命的。映像の邪魔をしない、が字幕の鉄則ですから。ただ、分かりにくいと言っても、一般の視聴者は流してしまう程度のようで、こんなに気になるのは同業ゆえ。なにしろ、チェックバックで「分かりにくい」と指摘されるたび、「あちゃ~」と頭を抱えているわけで。なんだか自分の悪い字幕例を見せつけられるようで、イタかったです。

 で、思い出したのが松浦美奈さんの『裏切りのサーカス』の字幕。ものすごく入り組んだ内容なのに、字幕を読んでいる感覚がなく、スッと頭に入ってきました。あれこそ字幕の神髄!いつになったらあのレベルにたどり着けるのか…。ドイツビールで乾杯しながらも、そんな想いが心に引っかかっていた旅でした。(あ、でもビールはしっかり堪能しました♪)

http://uragiri.gaga.ne.jp/

izumi

2013年6月19日水曜日

出し切れない悲しさ…

字幕をつけていてたまにちょっと悲しいのは、字数制限でキャラクターの特徴を出しきれないこと。最近担当した作品の中にクソまじめでちょっとマヌケな刑事が登場しました。大まじめな顔で的外れなことを言ったり、回りくどく当たり前のことを力説したりする愛すべきおバカさんです。このおバカさんがボケても周りはスルー。ツッコミも何もありません。ところが、これが困るんです!
原音を直訳しても面白くないし、ちょっとひねると“まとまりのない悪い字幕”と思われてしまいます。かといって演出がすぎると周りの反応と合わなくて違和感が…。
そこで周りが反応していないのをいいことに、面白みのない言葉に訳してしまえば楽ちんなのですが、それではキャラの個性を完全に奪い去ってしまいます。

刑事がまじめな愛すべきおバカさんであると伝えつつ、違和感のない字幕をなんとか練り出す。これができないと、キャラを出し切れず悲しい字幕になってしまうのです。

では、愛すべきおバカさんのキャラが表れるシーンを1つ。これはツッコミが入るので、少し訳しやすいかな。(実際のスクリプトと変えてあります)

①刑事の上司  この男を使って、スミスを逮捕するわ。
(I’m going to use this guy to bring Smith to justice.)

②バカ刑事  それは無理です。(That’s not possible.)

③バカ刑事  それじゃ“vinegar”と韻を踏む言葉を探そうとするようなものです。
(That would be like trying to find a word that rhymes with vinegar.)

④刑事の上司  “miniature”がある。(Miniature.)


ちなみに字数制限はそれぞれ①15文字、②4文字、③8文字、④4文字です。

さて、みなさんならどんな訳をつけますか?   yoko

2013年6月13日木曜日

まっとうな仕事

「字幕翻訳の世界に限らず、若い人にまっとうな仕事をさせてあげてほしい」――東京新聞で見かけた太田直子さん(字幕翻訳家)の言葉に、思わずウルッときた。映像翻訳を初めて10年、キャリアも年齢も「若い人」ではないけれど、仕事に対する危機感はいつもある。太田さんが嘆くように「早く!安く!」の声は年々エスカレートしているし、かと言ってじっくり取り組める仕事だけ選んでもいられない。自分の中で譲れないラインはあるけれど、断ってから「やるべきだったかも~!」と悩むこともしばしば。

 それでも私が仕事を始めた頃は、まだ「がんばれば翻訳で生活できる」希望があった。時給換算すると泣けるのは自分の能力不足のせいで、仕事に慣れ、効率が上がると、そこそこ稼げた。その延長でなんとか今まで続けている。翻訳の質を厳しくチェックしてくれる「大人」が周りにいたのも、つくづくありがたいと思う。(太田さんは「絶滅危惧種の“本物の大人”」と表現。そうなの!?)

 太田さんの言葉にウルッと来るのは、次の世代を育てようという気概を感じるから。こうした先輩方が苦労して道を開いてくれたから、私たちが仕事をできる。私もいつの間にやら、中堅に足を踏み入れてる。ここで踏ん張らないと、下の世代にどんどんしわ寄せがいってしまう。周りに流されず、自分にできることを模索しながら翻訳の質を上げること。今の自分に思いつくのはそのくらいだけど、がんばろ。いつになく使命感を感じた夜でした。(izumi)


『HOMELAND』シーズン1、レンタル開始!

米ロサンゼルスで今年1月13日に第70回 ゴールデン・グローブ賞が開催されました。日本ではFOX crimeで放送された『HOMELAND』シーズン2が2年連続「作品賞」を受賞。その他、クレア・デインズの「女優賞(2年連続)」、ダミアン・ルイスの「男優賞」の主要3部門を制覇。TVシリーズのドラマ部門では、なんと最多の3冠を達成しました。
そんな大人気のTVシリーズがいよいよDVDになってレンタル開始!
6月中は下記のサイトで第1話が無料配信されています。

http://www.tsutaya.co.jp/movie/ms/homeland/index.html

私にとって、この硬派な社会派ドラマの字幕を担当させていただくのは大変なプレッシャーでした。イラク戦争、CIA、テロリスト、背景のアメリカ情勢、歴史に用語…と調べ物の数は膨大。あまりに必死で季節の移り変わりにすら気づかないほど、あっと言う間でした。苦労して字幕をつけた作品がレンタル店に並んでいる姿は感動ものです。
ぜひご覧ください!(yoko)