2013年9月28日土曜日

JATENTキックオフイベント報告・後編

 前回のレポートでは映像翻訳者とゲーム翻訳者が実際に作業に使うツールのところまでお伝えしました。後編では、もう少し具体的にそれぞれの翻訳者から飛び出した苦労話を、あえてお伝えしようと思います。

 まず字幕翻訳者の岩辺さんのお話から。岩辺さんは字幕翻訳に欠かせない“スポッティング”作業について詳しく説明してくださいました。実は、字幕翻訳が大好きな岩辺さんですが、スポッティングだけはどうしても苦手なのだそうです。最初の頃は映像10分のスポッティングに丸1日かかり、泣きながらやっていたと。この苦労話に共感を覚える字幕翻訳者は少なからずいるのではないでしょうか。(ちなみに私も…ですが、ありがたいことに今は専属スポッターのmichikoが一手に引き受けてくれているので、翻訳にたっぷり時間をかけられるようになりました!)

 吹き替え翻訳者のチオキさんのお話でとても面白かったのは、少林寺拳法がテーマの映画を翻訳された時のお話。登場人物がみんな似たような坊主頭だったために、原稿には僧侶1~僧侶80番台、敵対するチームの僧侶も50番台まで書き分けなければならず、大変な苦労をされたそうです。字幕と違い、吹き替え翻訳では背景に流れるラジオの声や通行人の声まで訳さなければならないわけですから、想像するだけで気が遠くなります。大変なご苦労だったでしょうが、笑顔で楽しそうに話される姿に尊敬の念を抱きました。

 ゲーム翻訳の場合、1つのタイトルに大勢の翻訳者が関わることがある、というのは前編でもお伝えしました。長尾さんは、大勢の翻訳者の原稿をまとめるエージェントの担当者の負担をできるだけ減らすために、申し送りをものすごく細かくつけるとお話されていました。映像翻訳と違い、ほとんどの場合、音声や映像を確認することなくテキストだけを訳していくゲーム翻訳。極端な例で言うと、「村人1」の“Hey”というひと言が怒っているのか、にこやかな挨拶なのかも分からないこともある。なるほど、細やかな申し送りをつけるのは長尾さんのサービス精神の表れであり、だからこそ、クライアントさんから重宝されるのでしょうね。

 苦労話にスポットライトを当ててお伝えしましたが、3人の熱意のこもったトークからは仕事愛がひしひしと伝わってきました。そして、ひと晩中でも話し続けられそうな盛り上がりの中、パネルディスカッションの時間は終了。熱いトークは質疑応答へ持ち越されました。

 こうして個性豊かなパネリストを迎え、JATENTの記念すべき第1回イベントは大成功に終わりました。終始笑いの絶えないカジュアルなムードはエンタメ翻訳イベントならでは、でしたね。ご参加いただいた皆さん、そしてイベントを影で支えてくださった皆さんに心から感謝いたします。ありがとうございました。
今後も皆さんに喜んでいただけるイベントを企画していきますので、ご期待ください!


さて、ここからは前編と同じく事前に寄せられたご質問にお答えしますね。

Q. 今後JATENTのこうしたセミナー等は頻繁に行われる予定でしょうか?
もしそうであれば、JAT入会も検討したいと思っています。

A. もちろん今後もセミナーは開催していきます!ワークショップやパネルディスカッション、忘年会や交流会など、さまざまな企画を考えていますので、ぜひぜひ参加してくださいね♪


Q. 仕事の受注はどういったルートが多いですか?受注先を得るまでの経緯(たとえば、出身のスクールの紹介とか)を教えてください。

A. スクールによって、じっくり学ぶスタイルや即戦力をつけるスタイルなど、いろいろあります。また、スクールの雰囲気も違うので、実際に説明会に行ったり足を運んで自分に合っているかどうか、通いやすいかどうかなどを考えて選ぶといいと思います。オフ会や交流会に積極的に参加して、生の情報を集めるのもお薦めですよ。


ご質問をお寄せくださった皆さん、どうもありがとうございました!お答えしきれなかったご質問は、また機会がありましたら、ご紹介させてください。

2013年9月19日木曜日

JATENTキックオフイベント報告・前編

 先日のJATENTキックオフイベントはizumiの報告どおり大勢の方に参加いただき、交流会も含めて大盛況でした。イベントに主催者として参加したことで、いかにエンタメ系翻訳者の方々が勉強の場、交流の場を求めていたかを実感!今後も翻訳者のためになる、楽しい企画をどんどん考えていこうといっそう意欲が高まりました。

 さて、当日参加できなかった方のために、イベントの内容を少しご説明しようと思います。イベントはゲーム翻訳者の長尾龍介さん、吹替・字幕翻訳者のチオキ真理さん、そして字幕翻訳者の岩辺いずみさん(izumi)の3人によるパネルディスカッション形式で行われました。

 パネリスト紹介では、それぞれ業界へ入ったきっかけから現在の活躍に至るまでを、簡単にご紹介いただきました。映像翻訳者の2人は、プロになって数年後に勉強不足を感じ、2校目の映像翻訳学校に通い始めた、というお話が印象的でした。

 次は案件の受注から納品までの流れと作業環境について伺いました。吹替と字幕では意外に作業工程が違うことが分かって、字幕専門の私にはチオキさんのお話が大変興味深かったです。またゲーム翻訳では、ひとつのタイトルで複数の翻訳会社、さらに翻訳会社から依頼を受けた複数の翻訳者がかかわっている場合があると聞いて、驚きました。(いったい総勢何人がかかわっているのだろう…)長尾さんは、とりまとめる担当者の負担をできるだけ減らすよう、間口の広い翻訳をすること、そして細かい申し送りをつけるよう気を配っているそうです。ツールの話では映像翻訳者はSSTG1、ゲーム翻訳者はFelixを使用しているというお話でした。

 具体的な例をあげた深い話が飛び交い、パネリストの目はキラキラ、会場の参加者からもたまらず質問が飛び出し、盛り上がってきた頃、業界事情や、エンタメ翻訳者を目指す方へのアドバイスや仕事の醍醐味について話していただきましたが、それは後編でお伝えしますね。


ここからは、お申し込み時に事前にいただいた質問をいくつかご紹介したいと思います。

Q. それぞれの分野で必須もしくは持っていたほうがいいと言われているソフトやツールがあればご紹介ください。

A.  映像翻訳者であれば前出のSSTG1という字幕制作ソフトが必須です。なくても作業そのものはできますが、最近の映像翻訳エージェントはSSTG1のsdb形式データでの納品を求めるところがほとんどだと思われるからです。他には日本語入力システムATOKや連携している辞書やシソーラス、用字用語集のソフトもあると作業効率がかなりアップします。

Q.  翻訳の仕事を始めたきっかけは何か?

A.    映像翻訳を始めたきっかけは、英語を武器に仕事をしたいと考えたことと映画が大好きで、字幕に興味を持っていたからです。

Q.  コンスタントに仕事を獲得するために心がけていることは?

A.  初めのうちはコンスタントに仕事をいただけませんでした。ヒマな時期が続いたかと思うと、仕事の依頼が忙しい時に集中し、泣く泣くお仕事をお断りすることもよくありました。ヒマな時期に取引先の担当者に会って近況を報告したり、新規開拓のための営業メールを書いたり、トライアルを受けたりすることも必要だと思います。


いただいたご質問はまだまだあります。次回以降もお答えしていきますね!

JATENTキックオフイベント報告・後編をお楽しみに♪ yoko

2013年9月14日土曜日

スポッターのつぶやき


 スポッティングを始めて、ざっくりですが548日。
納品した作品数は長編映画65本、ドラマ81本、特典映像20本、ドキュメンタリー5本、スポーツ13本合計184本。(真面目に数えてみました…)この数字が、多いのか少ないのかわかりませんが、自分自身では「お~よくやったなぁ」と思いました。
 
 始めた頃はSSTの使い方もままならず、専門用語もちんぷんかんぷん。業界ではあたりまえのイン点やカット割りなどの用語も、私にとっては何のことやら…。翻訳学校に通ったわけでもなく、全くの素人。おまけに理解できるのは日本語のみ。細かい作業が嫌いではない事、映画が好きな事、ただそれだけの理由で字幕翻訳の世界に足を踏み入れたのです!今思えばなんて無謀な…ですよね。

   制作された作品が料理だとすると、スポッティングはお皿を出す係りだと思っています。料理をお皿に盛りつけるのは翻訳者。私は、翻訳者が訳をのせやすいように、お皿を出さなければなりません。そのタイミングは、翻訳者によっても、作品によっても異なる場合があります。
  
 ルールがまだ身についていない頃はスポッティングをとっていい音声と、とらなくていい音声の区別がうまくできませんでした。うっかり犬の鳴き声や鐘の音などもとってしまい、たびたび翻訳者に「どう訳せと?」とツッコミを受けたものです。スポッティングをとったデータファイルを送るときはいつもドキドキしています。翻訳者の手を煩わせていないか… “自分でやった方が良かった”と後悔させていないか…と、一年半経った今でも常に考えてしまいます。

  「ありがとう。助かりました!」のメールを受け取った時は心の底からホッとします。きっと、ミスもあると思います。翻訳者は必ず手を加えているはずです。それでも、「ありがとう。助かりました!」の文字を見ると、もっとうまくなりたい、もっと完璧なスポッティングをとって訳す事に専念させてあげたいと思います。そして存在価値のあるスポッターでいるために、作業前の翻訳者に役立つ情報はなるべく早く提供することを心がけています。

   まだまだ未熟者のスポッターですが、初めて作品にかかわった時の緊張感を忘れずに、どこまでも完璧を目指して頑張りたいと思います。     michiko


2013年9月6日金曜日

JATENTキックオフイベント、無事終了!

 9月1日、JAT(日本翻訳者協会)のエンタメ翻訳文科会JATENTのイベントが開催されました!告知が2週間前と短期間だったにもかかわらず、参加者50名以上、交流会参加率は9割越えと大盛況。ブログを見て来たくれた方もいて、Tri-Logueメンバーは密かに感動しておりました。

 今回、Tri-LogueからはYokoがモデレーター(司会進行)、Izumi(私)が字幕のパネリストを担当。Michikoは参加者として最前列のど真ん中に陣取り、私たちの緊張をほぐしてくれました。実は私、大勢の前で話す経験などここ数年まったくなく、かなり緊張していたのです。でも隣に座っていた吹き替えパネリストのチオキ真理さんの話術がすばらしく、会場と一緒に笑っているうちに自然に緊張がほぐれました。チオキさん、感謝です♪
同じくパネリストのゲーム翻訳者、長尾龍介さんの独特のノリとゲームLOVEな話が面白くて、グイグイ話しに引き込まれました。今回の話の流れを組み立ててくれたのも、長尾さん。パネリストそれぞれの個性の違いがうまく絡み合い、バランスの取れた内容になったのではないでしょうか。

 そしてパネリストの個性をうまく引き出したのがYoko!イベントの企画が出た時から、モデレーターは彼女しかいないと全員一致で決定。期待を裏切らない見事な進行役でした。交流会も名刺交換とおしゃべりに花が咲き、交流会のみ参加の方も加わって賑やかでした。映像翻訳系とゲーム翻訳系のカラーの違いが見えたのも、面白かった♪ゲー翻チームは遅くまで残る方が多く、仲間意識の強さを感じました。

 今回のイベントで何よりも嬉しかったのが、会場の雰囲気が良かったこと。お1人で参加する方も多かったのですが、話が進むうちに皆さんがリラックスした表情になるのが分かりました。質問も時間が足りなくなるぐらいしていただき、嬉しかったです。事前アンケートでいただいていた質問に答えきれなかったので、それは追って答えていきたいと思います。しばらくお待ちくださいね。

 今回、短い準備期間でイベントを成功させることができたのは、多くの協力を得られたおかげです。特にJATのスタッフの方々には、JATENTの立ち上げからイベント企画、そして当日まで並々ならぬご苦労をおかけしました。心から感謝の気持ちでいっぱいです。

 近いうちにイベントの内容について詳しく書きたいと思いますが、まずは無事に終わったご報告まで。ありがとうございました♪ izumi