2014年4月18日金曜日

ワークショップを終えて…

 久しぶりの更新になっちゃいました。izumiです。ハナミズキがきれいに咲いてますね。遅くなりましたが、3月21日に開催したイベント「フランス映画字幕アトリエ」の報告をしたいと思います。なんと、このブログを見て参加してくれた方もいました!コツコツやってきたことが形になるのは、心からうれしい。ありがとうございます♪

第1部では字幕翻訳の仕事について説明しましたが、ここでは省略。(長くなるので…すみません!)コーヒーブレイク後、第2部のワークショップを行いました。今回の目玉は、日仏通訳・翻訳者のアレクサンドル・ジロ(Alexandre Giraud)先生によるフランス文化のレクチャーです。事前にジロ先生と相談し、フランス語の映画とドラマ3本の中からワークショップに適したシーンを選んでおきました。これを1シーンずつ見せたあとにジロー先生が背景を説明し、私が訳出のポイントを教え、参加者に字幕を作ってもらうという流れでした。いちおう3本用意したものの、最後の1本は説明だけで時間切れになるかなと思っていました。ところが、いざ始めてみると、短い制限時間内できちんと字幕らしく仕上げる方が結構いらっしゃるのです!これには驚きました。

 もともとアトリエを企画したエコール・プリモはフランス語のレベルが中上級向けの学校です。しかもあとでご挨拶いただいて分かったのですが、仏検1級取得者が何人かいらっしゃり、この方々の翻訳能力が高かったのです。今回はスクール生以外の方も多く参加されていたので、まず参加者全員に原文を1文ずつ直訳してもらい、意味を確認してから字幕にしてもらいました。それでも、短い時間で直訳から字幕にするのは難しいことです。言語能力の高い方には、ある程度の翻訳能力が備わるのだと感じました。おかげで3本全部、字幕翻訳まで終わりました!(準備しておいてよかった~!)

 ジロ先生のお話で興味深かったのは、フランス映画におけるアラブ系移民の扱いです。初期の頃は、たとえば50年代の『アラブの盗賊』(1955年、DVD盤は『アリババと四十人の盗賊』)から70年代のアルド・マッチョーネの作品にいたるまで、映画に登場するアラブ系のほとんどが、からかいや笑いの対象でした。この頃のアラブ系移民は一過性の現象で、フランスに長く定着するものではないと考えられていました。ところが80年代に入ると、増え続けるアラブ系移民にフランス人は脅威を感じます。そこで、『愛しきは、女/ラ・バランス』(1982年)に見られるように、白人主人公を脅かす存在としてアラブ系が描かれ始めました。90年代、移民は社会問題となり、『憎しみ』(1995年)など問題を正面から取り上げた作品が登場します。そして『Taxi』(1997年)でアルジェリア系フランス人のサミー・ナセリが主役を演じ、アラブ系がヒーローとして描かれるようになるのです。私が字幕を担当した『スリープレス・ナイト』でも、アラブ系のダークヒーローが活躍します。この変遷はアメリカ映画におけるアフリカ系アメリカ人の描かれ方と似ていますね。アラブ系を指す時にフランス語で”brun”(英語の”brown”)と言うことがあるのですが、これ、訳しづらくて困るのです。(結局「褐色の人」「アラブ系」と訳すことが多いのですが。)今回のお話を聞いて、心をこめて訳そうと思いました。(本当に!)

 さて、もうひとつジロ先生の言葉でおもしろかったのが、「字幕翻訳は同時通訳に似ている」というもの。すべてを訳すのではなく、全体のエッセンスをくみとって、その場に適した言葉で伝える作業が似ていると感じたそうです。同時通訳というのは、その場で話したことをすべて伝えるものだと思っていたので、ちょっとした驚きでした。

今回のイベントは参加者の方々の熱意とやる気がすばらしく、私自身も学ぶことが多く、刺激になりました。いや、本当にがんばらないとマズいと思いました!参加してくださった皆さん、有意義な時間をありがとうございました。今回のイベントを企画し、準備してくださったエコール・プリモのルコック先生、スタッフの皆さんにも、感謝の気持ちでいっぱいです。最後に、うれしかったことをひとつ。字幕担当作品に『ぼくたちのムッシュ・ラザール』というヒューマンドラマがあるのですが、最後の寓話のセリフが好きで書き取ったという参加者がいらっしゃいました。もう感無量でした。まさに翻訳者冥利に尽きます!これからも日々精進いたします♪

●翻訳百景のミニイベント(5月29日)に『星の王子さま』の翻訳者、河野万里子さんが登場します!席は残りわずからしいので、興味のある方はお早めに。

●ケベック語(カナダ、ケベック州のフランス語)の辞書

●エコール・プリモで春の講座が始まっています♪